日本のチョコは偽チョコレート?

日本のチョコはヨーロッパではチョコレートとは名乗れない偽物だとベルギーで言われた、などという話を聞いたことがあります。そのときには、日本のメーカーは正直だし、日本の食品技術はすごいんだぞ、と思ったのですが、調べてみると、どうもその通りらしくてがっかりしたことがあります。
最近、複数の知人が、健康のためにチョコレートを少しずつ食べることにしている、と言っているのを聞いて、ブログに書いておくことにしました。
皆さん、だまされてはいけませんよ。

チョコレートの製法はもともとつぎのようなものです。
カカオ豆を、発酵させ、焙煎し、すりつぶしてペースト状にしたもの(カカオマス)を加熱して溶かした液体(チョコレートリカー)に対して、カカオマスから搾り取った油分(カカオバター)を適当量で加えて練ると、ベーキングチョコレートとなります。
このベーキングチョコレートには、カカオの固形分とカカオバターがいろいろな割合で混じることになりますが、成分はいずれもカカオ豆由来のものとなります。
カカオマスから油分(カカオバター)を搾り取って残った固形分(ココアケーキ)を粉砕したものがココアパウダー(あるいは単にココア)です。
(「カカオ」も「ココア」も英文表記は同じなのですが、豆については「カカオ」という日本語がなじんでいて、パウダーについては「ココア」という日本語がなじんでいるので、ちょっとややこしいですね。「カカオバター」と「ココアバター」はどちらの日本語もあまり耳慣れないような気がします。)
ベーキングチョコレートはこのままでは苦いので、砂糖などが添加されます。さらに添加物が添加されて、いろいろなチョコレートの製品となります。

この時に添加される添加物として、ヨーロッパ(EU指令)の「チョコレート」ではカカオバターの代用品として、カカオバターでない油(植物性油脂)を5%以下で添加することが認められていますが、ベルギーの「チョコレート」ではさらに厳格で、カカオバターでない油の添加を全く認めていません。
さて、日本ではどうかというと、植物性油脂の添加量の規定は特になくて、カカオ豆由来の成分の含有量(カカオ豆由来の成分の水分を除いた含有量)が35%以上(うちココアバター18%以上)であれば、日本の「チョコレート」と名のることができ、植物性油脂の添加量の上限については定めがありません。(なお、日本の「ミルクチョコレート」ならカカオ豆由来の成分の含有量が21%以上(ココアバター18%以上)で名のることができます。)
実際に、店頭で、日本製のチョコレートを見ると、成分表示に「植物性油脂」と表示されていたりしますが、その含有量は記載の義務がなく、表示されていません。
これじゃあ、ヨーロッパやベルギーでは、「チョコレート」と名のれませんよね。

しかも、この植物性油脂が、健康によいものであればよいのですが、この植物性油とは、ご存じのかたは多いと思いますが、おそらくは確実に、あの部分水素添加油です。部分水素添加油は、トランス脂肪酸を含み、このトランス脂肪酸は、健康リスクが確実にあるとされ、欧米の国々ではしばしばいろいろな規制や禁止の対象となり表示義務があるものとなっていますが、日本では規制されておらず、表示義務もありません(2017年1月現在)。

ここでようやく冒頭の話にたどり着きました。
日本の「チョコレート」には、植物性油脂が添加されカカオ成分の含有量が低く、ベルギーなどでは「チョコレート」と名のれないばかりか、トランス脂肪酸のために健康に悪いものになってしまっているものがあります。
こんなものを健康によいと信じて食べるようにしていたら、ちょっと気の毒です。

もちろん、日本のメーカーのなかにも、この状態に対する感覚の温度差はあるらしく、ココアパウダーを販売しているような大手メーカーは、製品ラインナップの高価格帯の製品では、植物性油脂を含まないチョコレートを販売しています。
皆さん、もし買うのであれば、せめて「植物性油脂」を含まない「チョコレート」を選んで買いましょう。より本物に近いチョコレートを応援しましょう。
そうしないと、「植物性油脂」を使った製品がこれからも販売され続けてしまいますよ。チョコ風味マーガリン(ショートニング)みたいなものを、「口溶けがよい」「健康によい」などと言われて食べてしまっている貴方、だまされないで!
特に、日本では、高価格帯の製品でも、一律に「植物性油脂」入りの製品しか出していないメーカーもありますから、そんなのは絶対に買ってはいけません。

(なお、チョコレートの製造方法からおわかりのように、チョコレートを製造すると必ずココアパウダーが生じます。カカオ豆から製造する大手メーカーであれば、チョコレートをそれなりにつくれば必ずココアパウダーが生じるはずなのですが、過去から現在まで、ココアを全く販売したことがないような、大手チョコレートメーカーもありますよね。何でそんな不思議なことが可能になるかと言えば、そうです、もし、カカオバターの代わりに、植物性油脂をたくさん使えば、ココアパウダーが余りませんよね。そういう疑惑は濃厚です。)

なお、この記事は、英文のウィキペディアなどを参考にしています。日本語のウィキペディアは、なぜか、チョコレートに植物性油脂を加えることが当然のように書いてあったので(2017年1月現在)、ちょっと参考にしづらかったからです。

参考:
https://en.wikipedia.org/wiki/Chocolate
https://en.wikipedia.org/wiki/Types_of_chocolate
https://en.wikipedia.org/wiki/Belgian_chocolate
http://www.choprabisco.be/engels/documents/BelgianChocolateCodeEN030507DEF.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/AMBAO
http://www.chocolate-cocoa.com/statistics/rules/classification.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8
http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/sh-proxy/ar/?lnk=1&url=https%253A%252F%252Fworkspace.fao.org%252Fsites%252Fcodex%252FStandards%252FCODEX%2BSTAN%2B87-1981%252FCXS_087e.pdf
(初稿:2017/2/11 転載:2018/2/10

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